伝えることは、本来時間のかかること

伝えることは、本来時間のかかること
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「伝える」という言葉は、どこからきてどこへいくのでしょうか。少々哲学的な問いかけになってしまいましたが、その由来はすぐに調べられます。

漢字・漢和辞典-OK辞典でひもといてみると、「」という漢字は小学校四年生で勉強するものであり、「傳」という旧字体がもともとは使われていたようです。この「傳」というのは「横から見た人」+「糸巻き」+「右手」に分解され、「人から人へと事物をぐるぐると回す」という意味から成った漢字であることがわかります。

人から人へ、ぐるぐると物事をまわしていくという、まさに「伝える」にふさわしい成り立ちでありました。熟語を思いつくままあげてみても「伝播」「伝達」「伝授」「伝統」「伝言」「遺伝」「口伝」といったように、「伝える/伝わる」意味を持つものがほとんどです。

「連絡するツテがない」「ツテを頼って上京する」のツテも「伝」という漢字が使われます。ご存知でしたか?

 

伝える側の努力と、伝わる側の素地

たとえば、部下に自分の仕事のやり方を伝えてみましょう。その部下は、果たしてすぐに自分と同じだけの仕事ができるようになるでしょうか。小学校一年生の子どもに中学生の数学を教えてみましょう。ちんぷんかんぷんで、即座に投げ出してしまうことでしょう。
このように物事を「伝える」には、

  1. 「伝える」側の努力
  2. 「伝わる」側の素地

この二つが必要になってきます。
1つ目はテクニックをつかめば自ずと改善できそうにも思えますが、2つ目はその人の経験によるところが大きいため、一朝一夕というわけにはいきません。相手の持つ素養・素地を踏まえた上で「伝える」努力を行うこと。

どうでしょうか、簡単にはいきそうもありませんね。
「伝える」ことに時間がかかる理由はここにあります。それはまさしく、教育に時間がかかることと同じ構造を持っています。

 

「伝える」ことと教育の問題

「伝える」ことと教育とは切っても切れない関係にあります。「伝える」ことは「教える」ことと同義といってもよいでしょう。それでは「伝わる」側の素地を高めるためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。

一番の特効薬は、マニュアルを作ることでしょう。マニュアルという明確かつ固定化した情報をもとに反復学習を行う、これ以上に効果的な学習法はありません。「伝わる」側の素地が希薄な物であれば、そんな相手にもわかりやすく「伝える」努力が必要となります。「伝わる」側の素地が醸成されてきたら、さらにレベルの高いマニュアルを与えるのです。こうして「伝える」側・「伝わる」側両方が成長していける、そんな関係を生み出す作用もマニュアルにはあるのです。

アメリカの著作家であるウィリアム・アーサー・ウォードは、こんな言葉を残しています。

凡庸な教師はただしゃべる。よい教師は説明する。すぐれた教師は自らやってみせる。そして、偉大な教師は心に火をつける。(The mediocre teacher tells. The good teacher explains. The superior teacher demonstrates. The great teacher inspires.)

マニュアルによって「伝える」ことも同様だと思います。
「偉大なマニュアルは心に火をつける」そんなマニュアルを作れるように、私たちと一緒に取り組んでいきましょう。

 


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