ルビにもルールがある ~文字組版の基本(後半)~

ルビにもルールがある ~文字組版の基本(後半)~
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文字組版の基本、後半は「ルビ」をとりあげます。ルビとはみなさんご存じのとおり、漢字の右側(縦組みの場合)に小さい文字で記載される振り仮名のことを指します。

では、「ルビ」という言葉はどこからきたのでしょうか。

宝石の”Ruby”が語源です

19世紀後半のイギリスでは活字の大きさごとに宝石の名前が割り振られていたそうです。

例えば……

  • 4.5ポイント:ダイヤモンド
  • 5ポイント:パール
  • 5.5ポイント:ルビー
  • 6.5ポイント:エメラルド

これが日本に輸入され、5.5ポイントに近い大きさの七号活字(5.25ポイント、8級)を「ルビ活字」とよび、振り仮名自体を「ルビ」と呼ぶようになったようです。七号活字は明治時代の新聞活字で振り仮名として利用されていたものです。同じ「ルビー」でも、アメリカでは3.5ポイントを表しているのだとか。
もしもアメリカから活字名が輸入されていたら、現在のルビは「瑪瑙(agate)」(アメリカ版5.5ポイント)になっていた可能性もあります。面白いですね。

 

ルビの基本と慣習

さてさて、そんなルビですが、こちらも出版社によってさまざまなハウスルールが存在します。ご紹介できるのはあくまで一例ですので、ご了承ください。

ルビの体裁ですが、基本的にはルビがつく文字(「親文字」と呼びます)の半分の大きさが基本です。また、拗促音は使用しない慣習がありますが、最近は使用するケースが増えているようです。見比べてみましょう。

なぜこんな慣習があるかというと、活版印刷時代のルビ文字に拗促音が存在しなかったためと言われています。現在はデジタル組版ですので文字の種類はいくらでも使用できますが、古くからある出版社などはこの慣習を受け継いでいるようです。

 

ルビの種類

まず大別して「モノルビ」「グループルビ」に分けることができます。

  • モノルビ:一つ一つの親文字に対してルビをつけるやりかた
  • グループルビ:複数の親文字に対して均等にルビをつけるやりかた

モノルビであれば漢字の読みを正確に把握できるメリットがあります。一方、読み方を親文字ごとに分割できない場合(「昨日」「五月雨」など)はグループルビを使用します。

モノルビの場合、ルビの位置が大きく二種類に分かれます。

  • 肩ルビ:親文字の上部と頭ゾロエになる
  • 中ルビ:親文字の天地中央に位置する

ここまでの例をごらんください。

肩ルビ・中ルビは出版社ごとに好みがあるようです。
横組みの場合は基本的に中ルビを使います。

 

ルビが3文字や4文字の場合は?

さきほど「ルビの体裁は基本的に親文字の半分の大きさ」と書きました。1文字や2文字であれば親文字の幅におさまりますが、3文字や4文字であればはみだしてしまいます。その場合はどうするのでしょうか。

ルビ文字数に応じて親文字の幅をあけるやりかたと、詰めるやりかたがあります。このあたりは出版社ごとのルールでさまざまにわかれているので、お手元の文庫本などを見比べてみると面白いかもしれませんね。

 

ルビという表現手法

主にライトノベルで多くみられますが、ルビを使って想像を超えた読ませ方をする小説が存在します。一種の表現手法としてルビが使われている例ですね。ちなみに、私個人がこれまで一番衝撃をうけたルビは、冲方丁『スプライト・シュピーゲル』シリーズです。(引用すると長くなるので、「冲方丁 ルビ」等で検索してみてください。もしくはお近くの本屋さんで!)

技術文書において、そこまで奇抜な表現を行ってはいけませんが……少なくとも文章を読みやすくする上でルビは一定の効力を果たします。読者の負担にならないよう、適宜ルビを振ってあげることも「伝える」上では重要な行為です。

可読性、読みやすさを第一に、ルビの役割を今一度みなおしてみましょう。

 


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